最新ロボット技術による国重要文化財橋梁での橋梁点検を実施(10月4日)

SIP維持管理技術の第8回フィールド試験の実施報告

岐阜大学SIP実装プロジェクト 研究代表 六郷 恵哲 研究担当 沢田 和秀

「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の一つ「インフラ維持管理・更新・マネジメント技術」において,岐阜大学では「使いたくなるSIP維持管理技術のMEネットワークによる実装(岐阜大学SIP実装)」という研究課題で活動しています。その活動の一環として,SIP「インフラ維持管理・更新・マネジメント技術」で提案されている多くの技術について,岐阜県内での社会実装に向けた絞込みを行い,説明会やフィールド試験で効果を検証することとしています。 今回,大垣市役所のご協力をいただき,80名を越える技術者が参加して,第8回のフィールド試験を実施しました。 今回のフィールド対象とした旧揖斐川橋梁は,明治19年に鉄道橋として建設された旧式のトラス橋梁(錬鉄製)です。現在は大垣市の管理する橋梁として,歩行者・自転車道として供用されています。現在の利用形態における荷重は,設計当時よりも小さいことから,コンクリート床版やリベット継手のゆるみ等の損傷進行の可能性は小さく,橋梁点検では,鋼部材の腐食の進行に対する監視が主たる対象と考えられます。 一方,明治期の大規模鉄道橋梁としての価値が認められ,2008年に国の重要文化財に指定されたため,文化財としての管理も求められています。このため,点検時における足場の設置制限や,建設当時の材料(錬鉄)による腐食部材の補修,補修工事の制約条件など,維持管理上の制限も多いのが現状です。この様な状況の中,SIPを始めとした新技術を活用することにより,定期点検の効率化とともに,損傷の進行を監視するために市役所職員が自ら効率的に点検可能とするための手法が求められています。  

第8回フィールド試験:日時 平成29年10月4日(水)13:00~17:00 フィールド試験場所:旧揖斐川橋梁(大垣市新開町,揖斐川右岸)

【フィールド対象のSIP維持管理技術】

  • 橋梁点検ロボットカメラ等機器を用いたモニタリングシステムの創生 開発責任者:藤原保久(三井住友建設)⇒技術説明資料
  • 橋梁点検カメラシステム「視る・診る」 開発責任者:南出 重克(ジビル調査設計)⇒技術説明資料

フィールド試験の前半では,フィールド試験橋梁から5km程度離れた説明会場で,フィールド試験場から送信される点検カメラのライブ映像等も利用しながら,技術説明が行なわれました。 フィールド試験では技術説明と見学だけでなく,参加者自らが橋梁点検ロボットを操作して意見交換を行なうという体験型フィールド試験を行いました。24名の参加者が3台のロボットカメラに別れて,1時間程度の利用体験を行い,意見交換を行ないました。また,新技術の活用に理解のある小川大垣市長もフィールド試験に参加していただき,1時間以上にわたる見学と技術者・研究者との意見交換を行っていただきました。 今回のフィールド試験では,現場から離れた場所にいる診断技術者が,ライブ映像により撮影箇所を指示しながら,適切な診断ができることを確認しました。また,自治体職員が自らタブレットを用いてロボットカメラを操作し,緊急点検等が迅速に実施できることを確認しました。 このフィールド試験の結果は,平成30年3月5日午後開催の第4回報告会にて,報告する予定です。

  • 説明会の様子
  •      開会挨拶(岐阜大学 六郷教授)
  •  現場カメラからのライブ映像を用いた説明会
  •               ロボット技術の詳細説明
  •    山田名古屋大学名誉教授との意見交換
  • フィールド試験の様子
  • ロボットカメラによる上弦材の点検
  •  カメラシステムによるトラス橋床組の点検
  •  参加者によるロボットカメラの操作体験
  •  大垣市長(橋梁管理者)による現地見学と説明

フィールド試験の詳細は,【第8回フィールド試験(体験型)実施計画書】を参照してください。 新聞報道⇒岐阜新聞 中日新聞  建通新聞