SIPインフラ維持管理・更新・マネジメント技術の紹介

ここでは,岐阜大学SIP実装プロジェクトで取り上げたSIPインフラ維持管理・更新・マネジメント技術を紹介しています。詳細技術資料では,岐阜県のメンテナンスエクスパート(ME)を主体とするメンバーと技術開発者が協力して作成したSIP技術の優れた特徴を示した資料(アピールシート)と,メンテナンスアドバイザー(MA)がSIP技術開発者へ提案した岐阜県での実装に向けた技術評価や改良提案を示した資料(アドバイスシート)を掲載しています。

(1) 橋梁の打音検査ならびに近接目視を代替する飛行ロボットシステムの研究開発/大野 和則(東北大学)
(2) 高速走行型非接触レーダーによるトンネル覆工の内部欠陥点検技術と統合型診断システムの開発/安田 亨(パシフィックコンサルタンツ)
(3) 近接目視・打音検査等を用いた飛行ロボットによる点検システムの研究開発/和田秀樹(新日本非破壊検査)
(4) 近接橋梁点検ロボットカメラ等機器を用いたモニタリングシステムの創生/藤原保久(三井住友建設)
(5) 多点傾斜変位と土壌水分の常時監視による斜面崩壊早期警報システム/王林(中央開発)
(6) 大型除草機械によるモグラ(小動物)穴の面的検出システム/鈴木清(朝日航洋)
(7) 橋梁・トンネル用打音点検飛行ロボットシステムの研究開発/西沢俊広(日本電気) (8) ALB(航空レーザ測深機)による洗掘状況の把握/坂下裕明(パスコ)
(9) 高精度かつ高効率で人工構造物の経年変位をモニタリングする技術/村田 稔(日本電気)
(10) 衛星SARによる地盤および構造物の変状を広域かつ早期に検知する変位モニタリング手法の開発/金銅将史(国土技術政策総合研究所)
(11) 学習型打音解析技術の研究開発/村川正宏(産業技術総合研究所)
(12) 傾斜センサー付き打込み式水位計による表層崩壊の予測・検知方法の実証試験/荘司泰敬(応用地質株式会社)
(13) 二輪型マルチコプタを用いたジオタグ付近接画像を取得可能な橋梁点検支援ロボットシステムの研究開発/沢崎直之(富士通株式会社)
(14) 舗装と盛土構造の点検・診断自動化技術の開発/八嶋厚(岐阜大学 工学部)

SIPの技術情報(1) 飛行ロボットを用いた橋梁点検

技術名称:橋梁の打音検査ならびに近接目視を代替する飛行ロボットシステムの研究開発 研究責任者:大野 和則(東北大学)

技術の概要(詳細技術資料

球殻を有する飛行ロボットを用いた橋梁点検技術である。球殻は直径960mm程度であり,狭隘な桁間へ進入し橋梁点検調査が可能な技術である。添架管がある場合でも進入可能な場合には,添架管が調査の妨げとなる桁下からの調査とは異なり,確実に点検が可能である。最大風速10m/secでも飛行可能であり,山岳部特有の谷地形のような風の強い地域でも適用可能である。

岐阜大学SIP実装プロジェクトでの活動

平成28年11月5日の第1回説明会で技術説明を実施し,11月29日に岐阜市内の長良川に渡河する千鳥橋(橋長215.5m,幅員9.6m,1969年完成の三径間連続鈑桁橋,1988年完成の三径間連続鋼箱桁橋)にてフィールド試験を実施し,技術の検証を実施しました。

  • 写真-1.1 球殻を有する飛行ロボット
  • 写真-1.2 狭隘空間で稼動する飛行ロボット

SIPの技術情報(2) 高速走行車両を用いたトンネル点検

技術名称:高速走行型非接触レーダーによるトンネル覆工の内部欠陥点検技術と統合型診断システムの開発 研究責任者:安田 亨(パシフィックコンサルタンツ株式会社)

技術の概要(詳細技術資料

高速走行型車両を用いてトンネル覆工を点検する技術である。走行型計測の画像に基づき変状展開図を作成,レーザー計測による点群データから変形モードを算出,非接触レーダー探査から巻厚不足、背面空洞の有無および内部欠陥を検出し,近接目視点検,打音検査を支援する。

岐阜大学SIP実装プロジェクトでの活動

平成28年11月5日の第1回説明会で技術説明を実施し,メンテナンスアドバイザーとの意見交換を行いました。その後,平成29年1月16日に本巣市内の小鹿トンネルにてフィールド試験で,技術検証を行ないました。
  • 写真-2.1 高速走行車両による点検
  • 写真-2.2 従来技術(接触型レーダー)による検証

SIPの技術情報(3) 点検ロボットを用いた橋梁点検

技術名称:近接目視・打音検査等を用いた飛行ロボットによる点検システムの研究開発 研究責任者:和田 秀樹(新日本非破壊検査株式会社)

技術の概要(詳細技術資料

ドローン技術を活用した点検ロボットにより,橋梁の裏側など人が近づきにくい部位に接近・接触し,従来点検法と同じ近接目視,打音検査を実施する。また、点検データを解析技術により定量的に評価するなど,安全で低コスト,技術者の技量に依存しないインフラ点検の実現を目的に開発している点検ロボットである。

岐阜大学SIP実装プロジェクトでの活動

平成28年11月5日の第1回説明会で技術説明会を実施し,メンテナンスアドバイザーとの意見交換を行ないました。平成29年2月22日に美濃市の下橋で,4月12日に各務原市の各務原大橋でフィールド試験を実施しました。  
  •  写真-3.1 下橋でのフィールド試験
  • 写真-3.2 各務原大橋でのフィールド試験

SIPの技術情報(4) 橋梁の損傷変化モニタリングシステム

技術名称:近接橋梁点検ロボットカメラ等機器を用いたモニタリングシステムの創生 研究責任者:藤原 保久(三井住友建設株式会社)

技術の概要(詳細技術資料

近接目視が困難な部位に対して,損傷状況の経年変化データの取得を可能とするモニタリングシステムである。 ① 橋梁点検ロボットカメラ(レーザー距離計,照明を搭載した高機能カメラ)、デジタルカメラ,レーザースキャナを組み合わせ,それぞれの長所を活かしたモニタリングシステムである。 ② 撮影時期が異なっても同じ位置で撮影できるように,撮影画像に詳細な位置情報を埋め込むことができる。 ③ 異なる日時に撮影した写真を重ね合わせ,変化した箇所を識別表示できる。

岐阜大学SIP実装プロジェクトでの活動

平成28年11月26日の第2回説明会で技術説明を実施し,メンテナンスアドバイザーとの意見交換を行ないました。平成29年2月22日に美濃市の下橋で,4月12日に各務原市の各務原大橋でフィールド試験を実施しました。
  • 写真-4.1 下橋でのフィールド試験
  • 写真-4.2 各務原大橋でのフィールド試験
 

SIPの技術情報(5) 斜面崩壊早期警報システム

技術名称:多点傾斜変位と土壌水分の常時監視による斜面崩壊早期警報システム 研究責任者:王 林(中央開発株式会社)

技術の概要(詳細技術資料

傾斜センサーと土壌水分計を活用し斜面の経時変化を多点計測することで,斜面の崩落予兆を検知する技術である。 ① 短距離無線と長距離無線を組み合わせることで,重点箇所を低コストで多点計測することができる。 ② リアルタイムで斜面変状を把握できるため,対策を要する斜面の抽出や豪雨後の緊急対応を効率化することができ近接目視が困難な部位に対して,損傷状況の経年変化データの取得を可能とするモニタリングシステムである。

岐阜大学SIP実装プロジェクトでの活動

平成28年11月26日の第2回説明会で技術説明を実施し,メンテナンスアドバイザーとの意見交換を行ないました。

SIPの技術情報(6) 河川堤防の点検

技術名称:大型除草機械によるモグラ(小動物)穴の面的検出システム 研究責任者:鈴木 清(朝日航洋株式会社)

技術の概要(詳細技術資料

大型除草機に計測機器を設置し,除草直後に地表に近い位置から堤防の形状を計測するシステムである。 ①モグラ(小動物)穴の検出や,堤防の局部変状を検出することができる。 ②堤防の形状を除草作業時に計測してデータを蓄積することで,堤防の変状を経年的にモニタリングすることができる。

岐阜大学SIP実装プロジェクトでの活動

平成28年11月26日の第2回説明会で技術説明を実施し,メンテナンスアドバイザーとの意見交換を行ないました。平成29年2月8日に大垣市内の揖斐川堤防でのフィールド試験を実施しました。
  • 写真-6.1 除草機に計測機器を設置したシステム
  • 写真-6.2 揖斐川堤防でのフィールド試験

SIPの技術情報(7) 飛行ロボットを用いた橋梁点検・トンネル点検

技術名称:橋梁・トンネル用打音点検飛行ロボットシステムの研究開発 研究責任者:西沢俊広(日本電気株式会社)

技術の概要(詳細技術資料

高所作業車等を利用した従来の打音検査の課題を解決するため,飛行ロボットを活用して,点検時の安全確保と,点検の生産性向上を図る技術である。 ① 非GPS 環境での位置計測,LRF による環境計測が可能である。 ② 高度30m,平均風速8m/s で安価な打音点検が,従来の点検と同等の時間での作業性が確保できる。 ③ 逸脱防止用ネットにより点検現場の安全性が確保できる。 ④ 2 時間の連続運用が可能である。

岐阜大学SIP実装プロジェクトでの活動

平成28年12月7日の第3回説明会で技術説明を実施し,メンテナンスアドバイザーとの意見交換を行ないました。平成29年2月22日に美濃市の下橋で,4月12日に各務原市の各務原大橋でフィールド試験を実施しました。
  • 写真-7.1 下橋でのフィールド試験
  • 写真-7.2 各務原大橋でのフィールド試験

SIPの技術情報(8) 河川洗掘状況の把握

技術名称:ALB(航空レーザ測深機)による洗掘状況の把握 研究責任者:坂下裕明(株式会社パスコ)

技術の概要(詳細技術資料

ALB(航空レーザ測深機)計測により,橋脚の洗堀状況を定量的に評価するモニタリング手法である。 ① 広範囲の河道内地形を短期間で計測でき,3 次元計測データから任意断面の横断図を作成できる。 ② 測深能力は水質によるが(河川の場合)最大6m 程度までを10cm 程度の精度で計測可能である。 ③ 2 時期のデータの標高差分から面的な河床変動量を可視化して,橋脚周辺の洗掘が把握できる。

岐阜大学SIP実装プロジェクトでの活動

平成28年12月7日の第3回説明会で技術説明を実施し,メンテナンスアドバイザーとの意見交換を行いました。

SIPの技術情報(9) 衛星画像を用いた人工構造物の経年変位モニタリング

技術名称:高精度かつ高効率で人工構造物の経年変位をモニタリングする技術 研究責任者:村田 稔(日本電気株式会社)

技術の概要(詳細技術情報

合成開口レーダ(SAR)を用いて、広範囲に渡る管理区域内の橋梁などの経年変位を一度に モニタリングする技術である。 ①衛星画像の蓄積がある地域では、過去に遡って、経年変化の解析が可能である。 ②宇宙からのデータ収集なので監視対象物に手を触れることなく、実施できる。 ③広範囲(一例:40km×40km)のデータ収集が一度に可能である。 ④解析結果は、経年変位(mm/年:速度)で得られる。

岐阜大学SIP実装プロジェクトでの活動

平成28年12月7日の第3回説明会で技術説明を実施し,メンテナンスアドバイザーとの意見交換を行ないました。

SIPの技術情報(10) 衛星画像を用いた人工構造物の経年変位モニタリング

技術名称:衛星SARによる地盤および構造物の変状を広域かつ早期に検知する変位モニタリング手法の開発 研究責任者:金銅将史(国土技術政策総合研究所)

技術の概要(詳細技術資料

衛星SAR による変位モニタリング技術を中核技術とし,ロックフィルダム等の災害時の早期被害把握や,平常時のより詳細で効率的な構造物の変位モニタリングを可能とする技術である。 ① 測量やGPS と比較して平均誤差 約5mm という高い精度での計測ができる(ロックフィルダムの変位計測結果より)。 ②変位を観測する地上設備が不要,測量に比べ迅速・安価にできる可能性,夜間・雨天時の観測も可能,面的・広域的監視が可能,などの特長がある。

岐阜大学SIP実装プロジェクトでの活動

平成28年12月7日の第3回説明会で技術説明を実施し,メンテナンスアドバイザーとの意見交換を行ないました。

SIPの技術情報(11) 打音解析技術を用いたコンクリート構造物の点検

技術名称:学習型打音解析技術の研究開発 研究責任者:村川正宏(産業技術総合研究所)

技術の概要(詳細技術情報

従来,点検員が主観的に判断していた打音調査を,音響解析技術によって定量的に評価する技術である。 ①簡便かつ高精度で確実な打音検査をすることができる。 ②打音検査結果の定量化,蓄積,可視化を実現するとともに,その分析により構造物の異常を検知することができる。 ③段階的な学習機能によって,より高精度な判断を行うことができる。

岐阜大学SIP実装プロジェクトでの活動

平成29年1月13日の第4回説明会で技術説明を実施し,メンテナンスアドバイザーとの意見交換を行ないました。

SIPの技術情報(12) 斜面表層崩壊の予測・検知手法

技術名称:傾斜センサー付き打ち込み式水位計による表層崩壊の予測・検知方法の実証試験 研究責任者:荘司泰敬(応用地質株式会社)

技術の概要(詳細技術情報

雨量,地盤中の間隙水圧,表層地盤の傾斜変化を同時に計測し,表層崩壊の発生を予測するモニタリングシステムである。 ①計測したデータを管理者等に自動送信できる。 ②集まったデータを蓄積することができる。

岐阜大学SIP実装プロジェクトでの活動

平成29年1月13日の第4回説明会で技術説明を実施し,メンテナンスアドバイザーとの意見交換を行ないました。

SIPの技術情報(13) 点検ロボットを用いた橋梁点検

技術名称:二輪型マルチコプタを用いたジオタグ付近接画像を取得可能な橋梁点検支援ロボットシステムの研究開発 研究責任者:沢崎直之(富士通株式会社)

技術の概要(詳細技術情報

人による点検が困難な箇所の画像を近接撮影する点検用ロボットシステムと,点検データを一元管理し,様々な用途に活用可能な点検データ管理システムを開発し,維持管理業務全般の省力化・高度化の実現を目指す。 ➀二輪型マルチコプタで人がアクセスしにくい箇所を近接撮影することで点検業務の効率化を実現。 ②点検データを3D-CAD上で管理。タブレットで点検記録の参照,入力,点検調書の自動出力ができる。様々な情報を検索し,維持管理計画を立案,劣化状況の把握と予測ができる。

岐阜大学SIP実装プロジェクトでの活動

平成29年1月13日の第4回説明会で技術説明を実施し,メンテナンスアドバイザーとの意見交換を行ないました。平成29年4月12日に各務原市の各務原大橋でフィールド試験を実施しました。

     写真-13 各務原大橋でのフィールド試験

SIPの技術情報(14) 舗装と盛土構造の点検・診断

技術名称:舗装と盛土構造の点検・診断自動化技術の開発 研究責任者:八嶋厚(岐阜大学)

技術の概要(詳細技術情報

舗装の劣化原因を含めた健全性と,盛土の安定性を同時に効率的に点検・評価する技術である。 ➀計測速度500m/h以上,探査深度10m以上となる全自動ハイブリッド計測による路面探査装置である。 ②舗装と道路盛土に関して,道路延長2m毎に舗装の健全度と,盛土の安定度・液状化危険度を定量的に評価できる。 ③Web-GISでリアルタイムに計測結果を管理者に提供し,迅速に予防保全に活用できる。

岐阜大学SIP実装プロジェクトでの活動

平成29年1月13日の第4回説明会で技術説明を実施し,メンテナンスアドバイザーとの意見交換を行ないました。平成29年1月31日に岐阜県道214号養老赤坂線でフィールド試験を実施しました。

 

  • 写真-14.1 養老赤坂線でフィールド試験
  • 写真-14.2 全自動ハイブリッド計測